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皮膚がんの発生を抑えている重要な遺伝子を発見!
宮城県立がんセンター研究所と奈良女子大学の研究グループは皮膚がんの発生を抑えている遺伝子を発見したことを報告しました。今後のがん研究に生かされるでしょうか?

(写真:Wiki Gh!/クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0 非移植)
皮膚がんの発生を抑える遺伝子とは
宮城県立がんセンター研究所と奈良女子大学の研究グループは皮膚がんの発生を抑えている遺伝子を発見したことを科学雑誌Oncogeneで報告しました。
細胞の中に存在するタンパク質の多くは、「リン酸化」という化学修飾でそれらの働きが調節されていることが知られています。これまでに、がん遺伝子の変異により作られた異常なタンパク質がリン酸化により活発化し、皮膚がんになると考えられていましたが、詳しい仕組みは不明でした。彼らは、このリン酸化に関わる1つの遺伝子が皮膚がんを抑制していると発表したのです。
皮膚がんの組織で遺伝子変異を発見
大規模な遺伝子解析を行ったところ、がん組織で「PP6」という酵素の遺伝子に変異が生じていることがわかりました。このPP6は、リン酸化したタンパク質の働きを抑える役割をもつことが知られていました。
研究グループは、PP6の働きが阻害されると、がん遺伝子の変異によるリン酸化が活発化し、がん細胞の異常増殖が引き起こされるのではないかという仮説を立てました。バイオテクノロジーの手法を用いてPP6の機能を喪失したマウスを作製し実験を行ったところ、予想通りPP6機能喪失マウスは正常マウスよりも皮膚がんの発生が早まることがわかりました。なんと、PP6機能喪失マウスでは発癌剤を塗布しなくても皮膚に腫瘍が形成されたのです。
発がんには多くの遺伝子が関わっているため、その仕組みは非常に複雑です。しかし、今回の研究では、PP6という一つの遺伝子が機能しなくなることにより皮膚がんになることが示されました。皮膚がん細胞の暴走を抑え込むブレーキの役目をもつ重要な役者が見つかりました。この酵素遺伝子をマーカーとしたがん予防や治療の技術開発が大いに期待されます。
参考文献
Hayashi K et al. Abrogation of protein phosphatase 6 promotes skin carcinogenesis induced by DMBA.
Oncogene. 2014 Dec 8;0. doi: 10.1038/onc.2014.398.