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【医師によるコラム】「リンゴは医者いらず」は本当か?

公開日:2015年5月1日
更新日:2020年4月27日

 リンゴを食べていれば医者にかからなくてもいい?外国にはそんな格言があるのをご存知ですか?欧米では昔からリンゴが体に良いとされており、多くの科学論文でそのことが証明されているようです。2015年3月には「リンゴは医者いらず」をそのまま検証する論文が掲載されました。果たしてこの格言は本当だったのでしょうか。


リンゴを食べると病気にならないって本当!?(写真:Shutterstock.com)

 特別企画、医師によるスペシャルコラムをお届けします!東京都渋谷区幡ヶ谷にある、六号通り診療所の所長の石原藤樹先生に書いて頂きました。記念すべき第一弾のテーマは「リンゴ」です。

 石原先生は弊社の産業医をしていただいたこともあり、社員も健康管理でお世話になっています。医者いらずとも言われるほど健康に良いとされるリンゴ、科学的根拠はどの程度あるのでしょうか?

リンゴを食べると医者に行かなくても良い?

 こんにちは。六号通り診療所の石原です。

 外国には「リンゴは医者いらず」という格言があります。リンゴを毎日1個食べる習慣があると、健康になって医者に行く必要がないので医者が失職してしまう、という医者の私には複雑な思いのする格言です。これは格言ですから、それ自体に科学的な根拠のあるというものではありません。

 ただ欧米では、毎日リンゴやその加工品を摂ることは、健康に良いという考え方が古くからあります。そして実際に多くの臨床試験が行われていて、リンゴはそれなりに健康に良い、という結果が出ています。

 1日1個程度のリンゴを摂ることによって、コレステロールは低下し、心筋梗塞や脳卒中、気管支喘息の予防にもなり、神経の病気や癌も予防された、というような多くの報告が結構一流の科学誌に論文となって載っています。

 リンゴの皮に含まれているリンゴペクチンに、放射性物質を身体から排泄する効果があるとして、震災後には話題となったこともあります。

リンゴと薬を比較する研究もあった

 2013年のBritish Medical Journalという一流の医学誌に、リンゴを薬と考えて、スタチンというコレステロールを下げる薬と、どちらが健康に対する効果があるかを比較する、という半分ジョークのような論文が掲載されています。

 勿論薬にはその効果としては劣るのですが、副作用はありませんから、意外にその効果は馬鹿に出来ない、という結論になっています。

1日1個のリンゴで薬が処方される頻度が減少

 2015年のJAMA Internal Medicine誌には、「リンゴは医者いらず」をそのまま検証する論文が載っていて、これによると1日1個のリンゴを食べることによって、医療機関の受診にははっきりした差はありませんでしたが、薬が処方される頻度が減少した、と言う結果になっています(※)。

 つまり、部分的には「リンゴは医者いらず」は正しいのです。

 日本のリンゴは大きいので、1日に2分の1個くらいで充分と思いますが、毎日新鮮な果物を少し摂るという習慣は、健康に良いものとして心掛けて損はなさそうです。


執筆者
医師 石原藤樹先生
プロフィール:1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。

参考文献
Davis MA, Association Between Apple Consumption and Physician Visits: Appealing the Conventional Wisdom That an Apple a Day Keeps the Doctor Away., JAMA Intern Med.