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B型肝炎ウイルスの予防接種の効果は?30年の長きに渡る研究の成果
B型肝炎ワクチンの効果を30年間のデータで検証
世界中の多くの国々で定期接種として採用されているB型肝炎ワクチン、日本では任意接種となっている*ためか、認知度が低いです。果たしてその効果のほどはどうなのでしょうか。
この問への答えとして、中国の研究グループは、赤ちゃんの時にB型肝炎ウイルスの予防接種をすることで、その後の肝臓がんやその他の肝臓病のリスクが低くなることを報告しました。
ワクチンを接種するタイミングが重要
この研究は中国江蘇省におけるおよそ30年にもわたる研究であり、ワクチン接種の効果は肝臓がんの発生率を84%、肝臓病による死亡率を70%、子供の劇症肝炎発生率を69%も減少させることが明らかになりました(※)。
さらに、この研究において、ワクチンを接種するタイミングについても興味深い示唆が得られました。
研究参加者の成人後、血液中のB型肝炎ウイルス抗原からウイルスへの感染が調査されました。その結果、出生後にすぐにワクチンを打った人は、70%以上の高い有効性があったのに対し、赤ちゃんの時には接種せずに10代で接種した場合には、その前の感染を防ぐことができず予防効果は20%しかなかったことがわかりました。ワクチンを接種するのであれば、できるだけ早い方が良いことがわかったのです。
ワクチンは感染症を抑える主要な予防法の一つです。今回のような大規模、そして長期的な研究を重ねることで、その有用性について、さらに明らかになっていくことが期待されます。
*日本においてB型肝炎ワクチンは、記事発行の2015年時点では任意接種でしたが、2016年10月より定期接種となっています(2021年10月編集追記)
監修者
医師 石原藤樹先生
プロフィール:1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。