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痛みを感じるために必要な遺伝子を発見

公開日:2015年7月9日
更新日:2019年5月20日

 私たちに備わっている痛みを感じる能力。これは危険から身を守るために必要な感覚です。イギリスのケンブリッジ大学らの研究グループは、生まれつき痛みを感じることができない人の遺伝情報を解析し、痛みを感じるために必要な遺伝子を明らかにしました。


痛みを感じるのはつらい!?でもとても大切な能力なのです。(写真:Shutterstock.com)

生まれつき痛みを感じることができない「先天性無痛症」

 私たちは、痛みを感じたり、熱いものを触ったときなど、とっさに手を引っ込め、自分の身を守ろうとします。

 「痛み」を感じる感覚は私たちにとって大切な能力で、痛みを感じることができないと怪我や腹痛など体の異常に気づくことができず、命にかかわる危険性もあります。

 遺伝的な原因により「痛み」を生まれつき感じることができない先天性無痛症という病気があります。イギリスでは、およそ100万人に1人の割合で痛みを感じることができない人が生まれてきているそうです。

 ケンブリッジ大学やウィーン大学の研究グループは、先天性無痛症の11家族の人の遺伝情報を用いて、この病気の原因となっている遺伝子を探索しました。

痛みを感じるために必要な遺伝子

 その結果、先天性無痛症の人ではPRDM12と名づけられた1つの遺伝子の10箇所で変異が生じていることがわかりました(※)。

 次に、カエルの細胞を用いてこの遺伝子の機能を調べたところ、この遺伝子は痛みのシグナルを受けとる組織で働いており、この遺伝子が正常に働かなくなると神経細胞の発達に問題が生じることが明らかとなりました。

新しい鎮痛剤の開発に期待

 このPRDM12遺伝子は痛みを感じるために必須な遺伝子としては5番目に明らかにされた遺伝子です。これまでに、痛みの受容に関わる遺伝子の発見により鎮痛剤の開発に発展した例もあります。このため、今回の研究は、先天性無痛症の治療だけでなく、新たな鎮痛薬の開発につながるものと期待されています。

監修者
認定遺伝カウンセラー 藤田和博先生
プロフィール:昭和大学藤が丘病院での先天異常、血液腫瘍の遺伝子・染色体検査の経験を生かし、現在は大東文化大学 スポーツ・健康科学部 健康科学科教授として臨床検査学教育と研究に従事。

参考文献
Chen YC, Transcriptional regulator PRDM12 is essential for human pain perception., Nat Genet.

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