- 管理栄養士
- 飲酒
- 尿酸値
- 痛風

【管理栄養士コラム】アルコールの増える季節、「尿酸値」に「痛風」、気になりませんか?
飲み会の季節、「尿酸値」にはご注意!

飲み会の多い季節、「尿酸値」や「痛風」が気になるという方も多いのではないでしょうか。(写真:Shutterstock.com)
職場や家族で健康の話をする際に「尿酸値・痛風」の話題はとても多いのではないでしょうか。お酒の機会が増えるこの時期に、身近な痛風について振り返っておきましょう。
男性の約60人に1人が『痛風』を経験!
痛風発作の件数を年齢別にみてみると、男性30歳代がもっとも多いようです。40歳以降になると、血液検査項目にある「尿酸値」が高値な状態(高尿酸血症)で服薬する人が増えるため、年齢と共に痛風発作の件数は減少傾向にあります(※1)。
あなたの痛風になりやすさは?
痛風発作には、生まれ持った体質(遺伝要因)と食事や飲酒、運動、体型(環境要因)が関与しています。遺伝要因としていくつかの遺伝子が報告されていますが、腎臓機能や、消化管にて尿酸排泄に関与している可能性があるようです(※2)。
高尿酸血症と痛風
痛風発作は、尿酸値が高くなるほど、また高い状態が持続することで関節に尿酸塩結晶が沈着し、その結果、関節炎(足の親指や膝などの関節が腫れ上がり激痛!)が生じるといわれています(※1)(図1)。

図1. 尿酸値と痛風関節炎を発症するリスク
30歳以上男性の30%が高尿酸血症(尿酸値7.0mg/dl以上)と報告されており、決してめずらしい病気ではありません。一方で女性は痛風全患者の1.5%程度と大変少ないです。理由のひとつとして、女性ホルモンが尿酸を排泄させることによるのではと考えられています。
痛風(高尿酸血症)を予防するためのポイント
1. 摂取エネルギーのコントロールとプリン体を多く含む食品の摂取に気を付ける
近年は尿酸の材料であるプリン体を多く含む食品を制限するよりも、摂取エネルギー(kcal)制限が重視されるようになりました。肥満は体内でのプリン体合成を促進するといわれており、食品から摂取するプリン体より問題であるといわれています(※1)。
プリン体を極めて多く含む食品(レバーなどの内臓や、魚の干物など)の摂取には気をつけながら、摂取エネルギー(kcal)の目安となる“体重”を適正にコントロールするようにしましょう。
2. 肉や魚のとり過ぎを改善し、乳製品を適量とる
肉類、魚類などの動物性たんぱく質は尿酸値を上昇させますが、乳製品はむしろ低下させ、痛風のリスクも減少させるといわれています(※1)。肉や魚の摂取量を減らし、大豆・大豆製品などの植物性たんぱく質に置き換えたり、乳製品(低脂肪おすすめ)を1日200~300mg摂ることを検討しても良いでしょう(※3)。
3. お酒は種類に関係なく1日1合まで
「プリン体を多く含むビールは飲まないようにしている」という対策は良く耳にしますが、重要なのは「総アルコール摂取量」です(※1)(図2)。アルコール自体が体内で、①尿酸産生を増加、②尿中への尿酸排泄を阻害、③利尿作用を促進し尿酸濃度を凝縮します(※4)。
プリン体を多く含むビールの量や頻度をコントロールしながらも、飲酒量全体は1日に1合未満を目安にしましょう(※1)。

図2. アルコール摂取量と痛風発症の関係
4. 尿を酸性にさせない食品(野菜や海藻、キノコ類)をモリモリとる!
尿酸は、尿が酸性だと溶けにくく、中性になるほど溶けやすくなります(理想的な尿は弱酸性)(※1)。食事内容によって、尿のpH(酸性・アルカリ性の度合い)が変化しますが、肉や魚などの動物性たんぱく質摂取が多い人は酸性に傾いており、野菜や海藻などを積極的に摂取している人は弱酸性であると報告されています(※5)。尿のアルカリ化を目指して、1日3食積極的(1食当たり小鉢1~2品)に野菜や海藻を摂るようにしましょう。
5. 水分補給とその方法
水分をとると尿量が増えることで尿酸が溶けやすくなり、排泄量も増えるといわれています。食事(料理や食品)に含まれる水分を含め1日2,500ml以上の摂取が推奨されています。飲水としては1日1,200ml以上を心がけましょう。運動後や、飲酒時は脱水により尿が濃縮し、尿酸濃度が上昇しますので、特に尿酸値の高い人は水分補給を意識するようにしましょう。
水分の種類は水でもお茶でも良いのですが、コーヒー摂取量が高くなるほど、痛風発症リスクが減少するとされています。飲まない人を1倍としたときに、1日に4~5杯で0.6倍、6杯以上で0.4倍(カフェインレスでもOK)です。他のお茶類では同様の効果は見られないようですので、コーヒー好きの方には朗報です。
また、砂糖入りのジュースや果糖が含まれる果物ジュースは、多く飲む人ほど発症リスクが高まるとされています。週に2~4回未満を目安としましょう(※1)。
6. 運動の種類は重要!
強度の高い運動(筋トレやダッシュを繰り返すような球技系)は尿酸値を高めるため、尿酸値上昇に影響しない有酸素運動(歩行や軽いジョギング等)を定期的に実施しましょう。
年末年始には、この6つに気をつけましょう!
ということで、痛風予防のためにこの6つに気をつけましょう!
1. プリン体だけではなく、カロリーにも気をつけて
2. 肉や魚はほどほどに。乳製品を適量とる
3. お酒は1日1合まで
4. 野菜や海藻、キノコ類を積極的に食べる
5. 1日2,500ml以上の水分補給を
6. 強度の高い運動より、有酸素運動を
尿酸値を意識した生活改善はその他の生活習慣病の予防にもつながります。年末年始を健康に過ごすためにも、今日からできることに取り組んでいきましょう!
参考文献
※1. 日本痛風・核酸代謝学会ガイドライン改訂委員会, 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第2版, メディカルレビュー社
※2. 公益財団法人痛風財団, 「尿酸値を変化させる要因」
※3. Choi HK, Purine-rich foods, dairy and protein intake, and the risk of gout in men., N Engl J Med.
※4. 厚生労働省, e-ヘルスネット「アルコールと痛風」
※5. Welch AA, Urine pH is an indicator of dietary acid-base load, fruit and vegetables and meat intakes: results from the European Prospective Investigation into Cancer and Nutrition (EPIC)-Norfolk population study., Br J Nutr.