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食事・生活

脂質異常症になりやすい人に起こる、脂質の分解をストップさせるメカニズムとは?

2015年03月13日 09時00分

 脂っこい食事が原因ともいわれる「脂質異常症」は、放っておけば命に関わることもある病気です。この病気になりやすい体質には、遺伝が関係していると分かっていましたが、研究で、遺伝以外の原因で脂質異常症になりやすい体質となる場合があると判明しました。果たしてこの人たちは、健康体質への切り替えが可能なのでしょうか?


脂質異常症に「なりやすい人」には何が起こっている?(写真:Shutterstock.com)

「脂質異常症」とは何か?

 「脂質異常症」とはどんな病気かご存知ですか?これは血液中に含まれる、コレステロールや中性脂肪などの脂質の値が基準値から外れた状態のことを指します。通常は数値が高いことが異常になるのですが、HDLコレステロール値は、基準値よりも低いことが動脈硬化を進めるため問題となります。

 脂質異常症を放っておくと、動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞などを起こし、命に関わることもあるかもしれません。

 長年、脂質異常症は「高脂血症」と呼ばれていましたが、HDLコレステロールの値が「低い」場合にも「高脂血症」というのは適当でないとされ、2007年、日本動脈硬化学会が、予防ガイドラインで「脂質異常症」と改め、以後この名前が使われています。

脂質異常症になりやすい人はいるのか?

 脂質異常症の原因は、脂肪の多い食事の食べ過ぎや運動不足などが考えられていますが、その一方、これまでの研究で、遺伝的に脂質異常症に「なりやすい体質」があるということが知られています。つまり、遺伝情報をもつDNAの配列を構成しているA、T、C、Gの4つ塩基の並び順(塩基配列)が、病気になりやすい人で決まっているということです。

 ところが、米国アラバマ大学の研究グループにより、脂肪の分解に関わる遺伝子において、DNAの塩基配列が正常でも、それぞれの塩基に化学的に小さな変化が起きることで脂質異常症に「なりやすい体質」となってしまうことが明らかとなりました。

遺伝子を担うDNAの化学的な変化を調査

 DNAは、配列は変わっていなくても、「メチル化」という小さな化学変化を受けることがあり、メチル化が起こったDNAの近くではその遺伝子が使われなくなるような現象が知られています。今回研究グループは、1000人の血液のリンパ球からDNAを取り出し、「マイクロアレイ」という方法で、1人当たり45万カ所以上のDNAのメチル化の状況を一気に調べました。そして、空腹時の血中小型LDLコレステロール(超悪玉コレステロール)、トリグリセリド(中性脂肪)の量の関係を調べました。

脂肪分解酵素の遺伝子の働きをストップしていた

 見つかったのは、脂肪の分解に関わる酵素の遺伝子「CPT1A」に存在する、「CpG」と呼ばれる配列の4か所のメチル化でした(※)。おもしろいことに、4カ所全て、直接タンパク質の設計図となっている部分ではない領域(イントロン)に存在していたのですが、そのうちの1カ所は、メチル化されていると明らかにCPT1A遺伝子のはたらきをストップしており、脂肪が正しく分解されない可能性があるということが判明しました。

 残念ながら遺伝子の配列は変えることが出来ませんが、メチル化のような化学反応は、また元に戻せる可能性がありそうです。将来、研究が進むことで、さらに多くの病気を発症前に食い止めることができるかもしれません。


監修者

医師 石原藤樹先生
プロフィール:1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。

参考文献

Irvin MR, Epigenome-wide association study of fasting blood lipids in the Genetics of Lipid-lowering Drugs and Diet Network study., Circulation.