- 肺がん
- がん
- 食事
- マウス
高カロリー食でがん予防?もうカロリーは気にしないでよいのか
高カロリー食を食べたマウスで、がん細胞が減った!?どういうことなのでしょうか。驚くべき研究を紹介します。
巷にあふれる高カロリー食。高カロリーの食事は、がんの原因となる肥満や糖尿病を引き起こすことから、がん予防のためには避けるべきと考えられています。しかし、そんな私たちの常識を覆すような研究報告が発表されたのです。
高カロリー食で肺がんが抑えられたマウス
スイスのジュネーブ大学を始めとする研究チームは、高カロリー食を食べたマウスでは、肺がんが大きくなりにくいことを報告しました。
彼らは人為的に肺がんを引き起こすことができるマウスを使用して、通常の食事を与えた場合と、通常よりも高カロリーな食事を与えた場合を比較して、がん細胞がどうなるのかを調べました。すると、がんになる前から高カロリー食を食べ続けていたマウスでは、肺がんが小さくなっていることがわかったのです(※)。一方で、がんになりはじめてから高カロリーな食事をしたマウスは逆効果で、肺がんが大きくなってしまいました。
異常なタンパク質の蓄積が「がん」を殺す!?
研究チームは、この結果は、「小胞体ストレス」と呼ばれる現象が原因ではないかと考えました。
小胞体とは、タンパク質をうまく加工して使えるようにするために働く場所で、それぞれの細胞の中に存在します。小胞体ストレスとは、その小胞体の中でうまく加工されなかった異常なタンパク質が蓄積された結果、大きなストレスとなりその細胞自体が自殺してしまうという現象なのです。
高カロリーな食事をし続けたマウスでは、この小胞体ストレスが、逆にがん細胞をうまく自殺に追いこんでいるのではないかと考えられています。実際に、小胞体ストレスがおこらない状態にしたマウスは、高カロリー食を食べていても肺がんになってしまったそうです。
驚きの研究結果、でも高カロリー食はやはり危険
「カロリーの高い食事をすることで肺がんが妨げる」という結果は、研究チームにとっても予想外の結果だったようです。
今回の結果は、「がん」という病気にはまだまだ我々の知らないメカニズムが隠されているということを暗に示しているのかもしれません。
これから安心してカロリーを気にせず食べられるということでしょうか?いえいえ、この報告はあくまでもマウスでの研究結果ですし、高カロリー食による肥満はがんだけでなく生活習慣病のリスクを高めると言われていますのでくれぐれもお忘れなく!
監修者
医師 石原藤樹先生
プロフィール:1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。
参考文献
※ Ramadori G, Diet-induced unresolved ER stress hinders KRAS-driven lung tumorigenesis., Cell Metab.