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遺伝子

寒いところに住むために変化した遺伝子ってあるの?

2018年10月31日 09時00分

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寒さに耐えるための遺伝子があるの?(写真:Shutterstock.com)

寒くて手足の感覚がない!

 寒くなると手がかじかんだり、足先の感覚がなくなったりしますよね。それは、生命を維持するために心臓や内臓の働きを優先させるため、手足の血管を収縮させて血流を減らしているからです。手足が冷えたとしても、すぐに命に危険が及ぶわけではないので、末端の血流を後回しにすることで体を守っているのですね。

寒い時に熱を産生させる仕組み

 熱を産生する仕組みは主に3つあります。1つ目は、食事をして食べ物を消化するときに生じる「代謝による産熱」。2つ目は、ぶるぶる震えて熱を発生させる「ふるえ産熱」。3つ目は、筋肉の収縮を伴わずに熱を産生する「非ふるえ産熱」です。「非ふるえ産熱」は、聞いたことがない方も多いと思いますが、脂肪細胞である褐色脂肪細胞の中でUCP(uncoupling protein)と呼ばれる特別なタンパク質が働くことで熱が発生するのです。少し寒い時は「非ふるえ産熱」により体を温め、それでは間に合わないくらいとても寒い時は「ふるえ産熱」により体を温めようとするのです。

人類が居住地を広げるために獲得した○○?

 少し寒い時に体を温めてくれる「非ふるえ産熱」について、興味深い研究が発表されました。遺伝子は、世代を経るたびにちょっとずつ違いが現れ、その蓄積によって多様性がうまれています。「非ふるえ産熱」が生じるときに働く重要な遺伝子UCP1遺伝子も、ハプロタイプによって何箇所か遺伝子に違いがあり、その違いによって「非ふるえ産熱」の産熱量に差が見られるということがわかりました。また「非ふるえ産熱」の産熱量が多いハプロタイプは、住んでいる地域の緯度と周辺温度とも関連があるということが九州大学の研究で明らかになりました。気圧、温度、湿度、気流、照度、水圧等を広範囲に制御できる環境適応研究実験施設で、「非ふるえ産熱」が起こる16℃に設定された室内に、日本人47人の被験者にTシャツと短パンを着て90分間過ごしてもらい、酸素消費量や表面温度、直腸温度を測定しました。酸素は産熱の際に利用されるため、酸素消費量が多いほど、産熱量も多くなります。直腸温度は体内温度の測定のために使用されました。その結果、UCP1遺伝子がヨーロッパに多いハプロタイプの場合は産熱量が多くなり、そうでない場合は、産熱量が少ないということがわかりました。より寒いヨーロッパに多いハプロタイプの方が、暖かいアフリカに多いハプロタイプの方よりも産熱量が多く、UCP1遺伝子の変化によって、寒い大陸でも生活できるようになったと考えられます。

 人類が10万年前にアフリカで誕生した後、寒冷地へと住む場所を広げるのに重要だったと考えられているのが、「非ふるえ産熱」です。人類の歴史と遺伝子との関係が紐解かれていくのは、とてもおもしろいですね。

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監修者
認定遺伝カウンセラー 藤田和博
プロフィール:昭和大学藤が丘病院での先天異常、血液腫瘍の遺伝子・染色体検査の経験を生かし、現在は大東文化大学 スポーツ・健康科学部 健康科学科教授として臨床検査学教育と研究に従事。
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