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【管理栄養士コラム】今から予防したい「骨粗鬆症」の原因と対策

公開日:2018年3月19日
更新日:2019年2月26日

適度な運動とカルシウムを意識した食事で骨粗鬆症の予防をしましょう


骨粗鬆症の予防のためにカルシウムをとりましょう(写真:Shutterstock.com)

 骨粗鬆症は、“骨折のリスクが高い状態”のことをいいます。医師による問診とあわせて、主に以下2つの項目で診断されます(※1)。

①骨密度
 骨密度は、体質や長年の生活習慣の影響で基準の値より低くなることがあります。骨密度が低下すると、骨の中身がぎっしり詰まった状態ではなく、目の粗いスポンジのようにスカスカとなり、小さな衝撃でも骨折する可能性が高くなります。

②脆弱性骨折(ぜいじゃくせいこっせつ)の有無
 過去に、背骨(椎体)や大腿骨近位部(図1)の脆弱性骨折の経験がある場合は、骨粗鬆症と診断されます。この脆弱性骨折とは、本来は骨が折れるような衝撃ではない刺激、例えば立った姿勢からの転倒か、それ以下の小さな外力で生じた骨折のことです。それ以外の箇所の骨折経験でも、骨密度の低下が伴う場合は、骨粗鬆症と診断されます(※1)。

図1. 大腿骨近位部

 ここで骨粗鬆症のセルフチェックしてみましょう。代表的な症状は、背中や腰に痛みがある、背中や腰が丸くなる、身長が低くなるなどがあげられます。身長が25歳時より4㎝以上(又はこの数年で2㎝以上)低くなった場合は、骨粗鬆症による背骨(椎体)の圧迫骨折の可能性が考えられます(※2)。圧迫骨折は痛みが伴うこともありますが、自覚症状がない場合もあります。気になる方は骨粗鬆症の専門病院を受診するようにしましょう。

骨粗鬆症は、なぜ予防した方が良いのか

 骨粗鬆症は、生涯元気に過ごすための寝たきり防止として重要です。介護が必要となる原因として、1位.認知症(18%)、2位.脳血管疾患(16.6%)、3位.高齢による衰弱(13.3%)に続き、4位.骨折・転倒(12.1%)があげられています(※3)。この「骨折・転倒」によって寝たきりになる背景には、ちょっとしたことで骨折してしまう骨粗鬆症が影響していると考えられています。

 ご自身が骨粗鬆症であることに気づかず歳を重ねてしまうと、寝たきりになるリスクが高くなりますが、最近は簡単に骨密度を測ることができるようになりました。まずは現時点の自分の状態を知ることが重要です。骨密度の測定は、各自治体の検診(骨粗鬆症検診)や人間ドックなどのオプション項目として用意されています。また、簡易な骨密度測定は、保健所主催の健康イベントなどで体験できる場合もありますので積極的に利用するようにしましょう。

骨粗鬆症の原因 ~遺伝はするのか~

 骨粗鬆症は、様々な生活習慣(環境要因)と体質(遺伝要因)が関わっているといわれています。遺伝要因が“骨密度”にどれぐらい影響しているのかを調べた研究では、母娘間の遺伝率は70%と報告されています。また、“骨粗鬆症による骨折のリスク”は、両親のいずれかに骨折歴があると1.18倍、両親だと1.54倍であることから、遺伝は大きな原因のひとつであるといわれています(※2)。
*骨粗鬆症の遺伝的傾向は遺伝子検査MYCODEで調べることができます。

骨粗鬆症の対策 ~生活習慣を改善する~

 骨粗鬆症になりやすい体質だとしても、日頃の生活習慣を見直すことで予防することは可能です。まずは以下3つの習慣について振り返ってみましょう。

①運動によって骨を強くし、骨粗鬆症を予防につなげる

 骨を強くするうえで運動や日常の活動は欠かせません。運動を行うことで骨に適度な刺激が伝わることが重要です。どんなに良い食事をとっていても運動不足で骨に伝わる刺激が少ないと骨密度が低下します。
 
 例として、宇宙飛行士が無重力の環境下(宇宙)に長期間滞在すると、骨密度が一気に低下することはよく知られています(※4)。また、アスリートの骨密度を計測してみると、柔道のように体重が重く体をたたきつける競技や、バレーボールのようにジャンプやダッシュ&ストップなどの動作を繰り返す競技は骨密度が高く、水泳のように浮力で骨に対する刺激が軽減されてしまう競技は、運動を実施していても骨密度は一般人程度にとどまるとされています(図2)。

図2.スポーツ種目と骨密度(コントロールを100%とした場合)(※5)

 また、運動は骨だけではなく筋機能や神経系も改善することから、転倒もしにくくなり、活発に活動している人は座りがちな生活を送っている人よりも大腿骨近位部骨折(図1)を20~40%も低下させたと報告されています(※2)。寝たきり防止にはとても重要な要素です。
 
 では、実際にどのような運動を実施すると良いのでしょうか。年代を3つに分けて整理してみましょう(図3)。

図3.年齢による骨密度の変化

【成長期】
 成長期は最大骨量をできるだけ高めることが重要です。骨量がもっとも増加しやすい時期により効果的な運動を行うことが推奨されており、例えば、球技や器械体操など衝撃を伴う運動を習慣的に行うと、より高い骨量を得ることができます。また、成長期の体重管理(特に女性)は特に重要です。体型が気になる年齢ではありますが、痩せている(低体重)状態が将来に及ぼす影響も理解することが大切です。

【成人期】
 近年の調査では、20~50歳代において、日頃の活動量が減少しているといわれています。子育てや仕事が忙しい年代ではありますが、最大骨量を減らさないためにも、活動量を今一度見直してみましょう。活動の種類としては、ウォーキングからジョギング、縄跳び、エアロビクスなどの荷重運動や、テニスなどの球技、中~高強度の筋力トレーニングが推奨されています。強度が高めの運動は、骨密度の維持に止まらず増やすことも可能です。忙しい方は時間を少しだけ確保し、強度が高めの運動にチャレンジするのも工夫のひとつです。

【中高年期】
 この時期は、骨密度の減少をできるだけ低下させないことに加えて、運動の種類を選び、転倒しないことも大切です。一般的には、ウォーキングが推奨されていますが、8000歩/日:週3日以上を1年継続すると骨密度が上昇したという報告があります。また、太極拳のような運動や、下肢中心に軽い筋力トレーニング(8~10回/日から開始)を行うことで骨密度は維持できるともいわれています(※2)。何より継続することが重要ですので、仲間をつくったり、教室に通うなどの工夫や、ご自身が好きな活動を選択するようにしましょう。

②カルシウムを意識した食事で骨粗鬆症の予防につなげる

図4.カルシウムの代謝バランス(※6より作図)

 では、食事からカルシウムはどれぐらい、どのようにとると良いのでしょうか。1日に摂取したいカルシウムの推奨量は650~700㎎/日(※7)ですが、日本人は不足傾向にあります。表1にカルシウムを多く含む食品を示しました。

表1.カルシウムを多く含む食品と1回当たりの目安量

文部科学省「日本食品標準成分表2015年(七訂)」(※8)に基づき計算

 カルシウムは残念ながら体内に吸収されにくい(図3)成分ですが、食品の種類によっても異なります。ある研究では、牛乳に含まれるカルシウムの吸収率は40%ともっとも高く、小魚類33%、野菜19%だったと報告しています(※9)。また、カルシウムは1食に集中してとるよりも3食+αなど小分けにとる方が効率よく吸収できます。これらの特徴を理解しながら、1日に必要なカルシウム摂取法をイメージしてみましょう。

【1日に必要なカルシウムを摂取するコツ】

 ①吸収率の高い乳製品を1日200g目安にとる
  (カルシウム200~250㎎)

 体重が気になる人は、低脂肪、低糖質な商品を食事や間食にとり入れましょう。乳製品(動物性脂肪)を多くとり過ぎると弊害もありますので、成長期を過ぎた一般成人(運動選手以外)は、1日200g程度がお勧めです。

 ②コマツナなどの濃い緑の野菜を1日1回以上とる
  (カルシウム100~150㎎)

 野菜に含まれるカルシウムの吸収率は低めですが、低エネルギーでビタミン、食物繊維が豊富というメリットもあります。野菜の中でも濃い緑の野菜を意識し、一度に茹でて常備すると便利です。また、ダイコンやカブは葉付きのものを購入し、チャーハンや炒めものに活用すると良いでしょう。

 ③豆腐製品や納豆などの大豆製品を1日1回以上とる
  (カルシウム50~200㎎)

 メイン料理にはならなくとも、日々の食事に組み込みやすい食品です。朝食に納豆やみそ汁、お昼や夕食のおかずに100g程度の冷奴や厚揚げを用意しましょう。間食には、ヨーグルトにきな粉を混ぜても美味しいです。

 ④こまめにとるために常備しておく食品
  (カルシウム20~300㎎)

 乾燥わかめ、しらす干し(冷凍推奨)、切り干し大根、骨ごと食べられる魚の缶詰を常備しておきましょう。例えば、切り干し大根をさっと水で洗い、ざっくり切ってみそ汁に入れると、だしが効いたとても美味しい汁物になります。また、しらす干しやわかめを“ひとつまみ”毎食料理に加えることを習慣にしても良いでしょう。

 ⑤カルシウムサプリメントとの付き合い方

 カルシウムをサプリメントで多量に摂取すると心血管疾患のリスクが高まることが報告されています(※2)。日本人が不足傾向であることから、カルシウムが強化された商品が数多く売られています。それらを上手に活用するのは工夫のひとつですが、サプリメントを使用する場合は、1回にサプリメントのみで500㎎(※2)以上摂取しないようにし、食事と合わせて1日2500㎎(※7)までにするようにしましょう。

 ちなみに、認知症の予防でも乳製品、大豆製品、野菜類の摂取が推奨されています(※10)。現在の食習慣の1品を置き換えたり、食品を新たに追加するなど、食事を改善することで様々な病気の予防も期待できます。

【ビタミンDでカルシウムの吸収率を高める】

 カルシウムの吸収率を高める方法として、ビタミンDの摂取が推奨されています。ビタミンDは、魚類やキノコ類、卵などに多く含まれていますが、紫外線(日光)に当たることで皮膚でも合成されます。1日15分程度日に当たることが目安となりますので、屋内にこもりがちの方は運動改善と合わせて検討してみましょう(※2)。

③過度のアルコールは骨粗鬆症のリスクを高めるので適量を

 アルコールは、骨粗鬆症のリスクを上昇させるといわれています。食事から摂取したカルシウムは腸で吸収されますが(図4)、アルコールはその吸収を抑制します。また、アルコールの利尿作用により尿中への排泄も促してしまうことから、飲み過ぎると骨粗鬆症性の骨折リスクを1.38倍上昇させるといわれています。この場合の“飲みすぎ”は、エタノール24~30gとされているので、日本酒で1合半、ビールで350ml×2本、ワインで250ml程度です(※2)。

 長生きをするうえで、元気に体を動かし、生き生きとした生活を送りたいですね。そのためには、いかに骨を丈夫に保つかがとても大切です。年齢に応じた身近な予防法にぜひ今日からチャレンジしていきましょう。

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参考文献
※1. 日本骨代謝学会, 原発性骨粗鬆症の診断基準(2012年度改訂版)
※2. 日本骨粗鬆学会, 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版
※3. 厚生労働省, 平成28年国民生活基礎調査の概要
※4. 大島博, 宇宙飛行による骨・筋への影響と宇宙飛行士の運動プログラム, リハビリテーション医学
※5. 日本体育協会編, アスレティックトレーナー専門科目テキスト9スポーツと栄養, 文光堂
※6. R.M. バーン, カラー基本生理学, 西村書店
※7. 厚生労働省, 日本人の食事摂取基準2015年版
※8. 文部科学省, 食品成分データベース
※9. 上西一弘, 日本人若年成人女性における牛 乳,小 魚(ワカサギ,イワシ), 野菜(コマツナ,モロヘイヤ,オカヒジキ)のカルシウム吸収率, 日本栄養・食糧学会誌
※10. Ozawa M, Dietary patterns and risk of dementia in an elderly Japanese population: the Hisayama Study., Am J Clin Nutr.

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